事業承継が問題となった事例

  • cases77
  • 2017年01月23日更新
男性
  • 男性
  • 遺産分割協議
  • ■被相続人との関係 被相続人の息子(長男)
  • ■相続人 依頼者、弟、妹(長女・次女)
  • 相続財産 土地建物1,000万円相当、店舗兼倉庫の土地建物2,000万円、株式会社の株式100%、預金400万円

ご相談内容

Bさんは、亡くなった母(Aさん)の遺産のことでベリーベスト法律事務所に相談しました。Aさんの夫はすでに他界しており、Aさんの相続人は、長男のBさんの他、次男のCさん、長女のDさん、次女のEさんの4人です。Aさんは、生前、Bさんと一緒に調味料の卸業を行う株式会社A香料を経営していました。

Aさんの遺産には、株式会社A香料の株式(Aさん自身が100%所有)と預貯金(400万円)、土地建物(1000万円)があり、その他Bさんを受取人とする生命保険金(3000万円)があります。
Aさんは、生前に「A香料の経営は今後Bに任せる」と公言していましたが、遺言書は残していませんでした。
A香料の資産としては、A香料の店舗兼倉庫の土地建物(2000万円相当)がありますが、負債は特にありません。

仕入先への支払いや従業員への給与を支払うと、大幅な赤字にはならないものの、ここ数年の売り上げは横ばい状態です。
Bさんは、「弟と妹との仲を円満に保ちつつ、引き続き株式会社A香料の事業を継続していきたい」といい、ベリーベスト法律事務所に相談にきました。

ベリーベストの対応とその結果

Bさんは、「会社がこれまで大きくなったのは、もちろん母や従業員のおかげもありますが、私が設立当初から取締役として、取引先に頭をさげて必死に営業してきたからです。銀行からの借入などはすべて私が連帯保証人になり、資金調達もしてきました。私には自分の家族の生活があるので、このまま事業を継続したいと考えています。妹たちは、自分がこのまま事業を継続することについては同意してくれると思うのですが、弟のCは自分が経営していくことが良く思っていないようです。今後どのようにすればいいですか」と弁護士に相談してくれました。

Bさんの相談に対して弁護士は、「A香料の株式については、できればBさんが100%保有していきたいところですよね。不平等感がないように、他の遺産の配分を調整して、遺産分割協議をしなければなりませんね。Bさんは、遺産分割の希望はありますか」と回答しました。
Bさんは「A香料の株式はすべて私が譲り受けたいと考えています。母が残した実家の土地建物と預貯金は、特に欲しいとは考えていませんが、A香料の土地建物は事業継続に必要です。」
と答えました。

そして、Bさんは「A香料名義の土地建物も遺産に含まれるのですか」質問しました。
これに対して弁護士は、「今回相続の対象となる遺産は、原則としてお母様名義の財産だけです。お母様と株式会社A香料は別の主体なので、今回の相続の問題では、別々に考えることができます。したがって、A香料名義の土地建物は、遺産に含まれません。もっとも、A香料の株式の価値を評価する際に、A香料の保有している資産の価値が大きく影響します。」と説明しました。

弁護士はBさんの代理人として、弁護士の名前で、他の兄弟にAさんの遺産に関する問題について協議したい旨の書面を送付しました。
すると、DさんとEさんからは、私たちは兄の意向に従うとの回答がきました。
ところが、弟のCさんだけは、「母の遺産はもっとあるのではないか」「兄だけが株を持って行くのは納得できない」などと難色を示していました。
しばらくするとCさんにも代理人弁護士がつきました。
そこで、弁護士は、Cさんの代理人、DさんとEさんと面談を行い、遺産分割協議を行うことにしました。

協議の結果、Cさんの代理人から
「Cさんは、昔A香料で働いていたが、兄の下で働くのを快く思わず、辞めざるを得なくなったことを今でも引きずっているようです。Cさんは株式が必ず欲しいというわけではありません。株式の評価をしっかりして、正当な対価をもらえれば、Bさんに株式を譲ってもかまいません」
との回答を得ました。

そこで、弁護士は、Cさんの代理人らと協議の上、A香料名義の不動産について、価値を査定しました。
また、会社の財務担当者らと協議の上、株式価値を評価しました。
すると、A香料の株式の価値は、すべてで約3000万円相当であるということがわかりました。

したがって、Aさんの遺産は、株式会社A香料の株式(3000万円)と預貯金(400万円)、土地建物(1000万円)の合計4400万円相当ということになりました。

法定相続分どおりに分けるとすると、B、C、D、Eさんはそれぞれ1100万円相当分を相続するわけですが、Bさんが株式を100%取得してしまうと、残り1400万円しか残りません。

そこで、Bさんは、C、D、Eさんに対して、自分が受取人になっていた生命保険金から1900万円を差し出し、Aさんの預貯金400万円と土地建物(1000万円相当)を三人で分けてもらうこととしました。

協議の結果、BさんはA香料の株式100%、Cさんは土地建物と現金100万円、DさんとEさんはそれぞれ、Bの現金とAさんの遺産の預貯金とBさんが差し出した現金の中から1100万円相当を受け取ることになりました。
Bさんは、引き続き事業を継続していくことができ、また母が残してくれた生命保険金を有効活用して自分自身の資産を差し出すことなく、相続の問題を解決することができました。

兄弟姉妹がみんな満足できる遺産分割協議を行うことができ、非常に満足しています。

全国の各オフィスから寄せられた解決事例をご紹介しております。(※ベリーベスト法律事務所全体の解決事例となっています)